改訂 防災工学

著者:編著者:山梨大学工学部土木環境工学科教授 鈴木猛康      著者:防災科学技術研究所雪氷防災研究センターセンター長 上石勲/国士舘大学理工学部理工学科教授 橋本隆雄/東海大学工学部土木工学科教授 山本吉道
分野:土木工学
ページ数:325
判型:B5判
ISBN:978-4-8446-0917-9
定価:本体 3,500円 + 税
地球の温暖化に伴って異常気象が発生し、世界的に自然災害が多発するようになっている。わが国でも、豪雨の頻発化、災害の激甚化が顕著となり、年間100名を超える犠牲者が発生している。これまでの観測記録に基づいた防災・減災対策が適用できなくなっている現状を鑑みて、犠牲者を減らすために、住民の早期避難を促す工夫が行われてきた。例えば、洪水ハザードマップは想定最大規模の降雨を対象とし、キキクルをはじめとする自主避難を促す防災情報が創出され、インターネットを介して個人が防災気象情報を入手できる環境が整ってきた。これに伴って避難情報の変更が行われ、被災者に対してはより細やかな個人補償・支援が行われるように、災害対策基本法が改正されている。
本著は、防災に関わるハード対策とソフト施策(法制度)をバランスよくまとめた唯一の教科書であると自負している。2021年に避難情報が変更され、1961年以来使われていた避難勧告が廃止されたのを機に、初版出版時から変更されたソフト施策(法制度)を中心に、最新の内容に更新し、本著の改訂を行うこととした。本著が、大学の防災の授業のみならず、技術者、行政職員や一般市民の防災教育・啓発に広く活用され、実用に供することを切に希望する。
目次正誤表追加情報
第1章 災害多発国-日本
1.1 はじめに
1.2 プレート活動と地震、火山活動
1.3 日本列島と地質
 1.3.1 日本列島の誕生
 1.3.2 日本列島の地質
1.4 誘因と素因
1.5 災害対策の4段階

第2章 防災工学を学ぶための基礎知識
2.1 はじめに
2.2 地震学、地震工学の基礎知識
 2.2.1 断層と地震
 2.2.2 海溝型地震と内陸活断層型地震
 2.2.3 活断層
 2.2.4 地震と地震動
 2.2.5 震度とマグニチュード
 2.2.6 震度階
 2.2.7 地震動の特性を決定する3つの効果
 2.2.8 表層地盤の卓越周期
 2.2.9 固有周期と固有振動
 2.2.10 共振
2.3 災害に関わる気象の基礎知識
 2.3.1 時間雨量と雨の降り方
 2.3.2 気象警報・注意報、特別警報
 2.3.3 記録的短時間大雨情報
 2.3.4 アメダス
 2.3.5 解析雨量
 2.3.6 台風
 2.3.7 線状降水帯とバックビルディング現象
 2.3.8 顕著な大雨に関する情報
2.4 地形学、地質学に関する基礎知識
 2.4.1 地形図
 2.4.2 岩石に関する基礎知識
 2.4.3 沖積層と洪積層

第3章 地震災害
3.1 はじめに
3.2 地震被害
 3.2.1 耐震設計の変遷
 3.2.2 木造住宅の被害
 3.2.3 道路
 3.2.4 地下構造物
 3.2.5 津波による被害
3.3 表層地盤と地震被害 福井地震
 3.3.1 福井地震と震度
 3.3.2 関東地震と共振
3.4 1964年新潟地震と液状化
3.5 地震動と緊急地震速報
 3.5.1 地震動から判断できる地震の諸元
 3.5.2 緊急地震速報
3.6 被害想定と地震防災
 3.6.1 想定とは
 3.6.2 想定地震の設定および地震動の設定
 3.6.3 建物被害
 3.6.4 人的被害
 3.6.5 ライフライン被害
3.7 地震対策(ハード対策)
 3.7.1 耐震設計とレベル2地震動
 3.7.2 地上構造物の免震、制震技術
 3.7.3 地下構造物の免震技術
3.8 地震対策(ソフト施策)
 3.8.1 建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)
 3.8.2 津波防災地域づくりに関する法律(津波防災地域づくり法)
 3.8.3 大規模地震対策特別措置法
3.9 技術者の役割
 3.9.1 中央省庁
 3.9.2 都道府県
 3.9.3 市町村
 3.9.4 設計コンサルタント
 3.9.5 総合建設業
 3.9.6 ライフライン企業

第4章 洪水害
4.1 はじめに
4.2 河川氾濫と地形
 4.2.1 谷底平野と河岸段丘
 4.2.2 扇状地
 4.2.3 氾濫原
 4.2.4 川の地形のまとめ
4.3 氾濫
 4.3.1 内水氾濫と外水氾濫
 4.3.2 破堤のメカニズム
4.4 堤防の設計の考え方
 4.4.1 計画の規模(治水安全度)
 4.4.2 超過洪水と河川氾濫
 4.4.3 計画高水流量と堤防高
 4.4.4 洪水予報と水位
4.5 避難の現状と水防対策
 4.5.1 避難の現状と問題点
 4.5.2 河川水位と避難情報
 4.5.3 洪水ハザードマップ
 4.5.4 水防法と水害対策
4.6 過去の水害と法制度
 4.6.1 法整備の歴史
 4.6.2 1947年カスリーン台風と水防法制定
 4.6.3 1959年伊勢湾台風と災害対策基本法制定
 4.6.4 長崎大水害と記録的大雨情報
 4.6.5 2004年新潟・福島豪雨と避難行動要支援者の避難支援
 4.6.6 2015年関東・東北豪雨災害と広域避難
4.7 山地河川の災害(2017年九州北部豪雨災害)
4.8 技術者の役割
 4.8.1 中央省庁
 4.8.2 都道府県、市町村
 4.8.3 建設コンサルタント
 4.8.4 総合建設業

第5章 土砂災害・火山災害
5.1 はじめに
5.2 土砂災害の種類
 5.2.1 崖崩れ
 5.2.2 土石流
 5.2.3 地滑り
5.3 土砂災害防止法と警戒避難
 5.3.1 土砂災害防止法の概要
 5.3.2 土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域
 5.3.3 土砂災害警戒区域の指定方法
5.4 土砂災害警戒区域指定と警戒避難体制
 5.4.1 土砂災害警戒区域指定の流れ
 5.4.2 警戒避難体制の構築
 5.4.3 土砂災害ハザードマップ
5.5 土砂災害警戒情報
 5.5.1 土砂災害警戒情報の定義
 5.5.2 土壌雨量指数とタンクモデル
 5.5.3 土砂災害警戒情報判定の仕組み
 5.5.4 雨量データに関する課題
5.6 土砂災害の例
 5.6.1 2017年九州北部豪雨災害
 5.6.2 平成30年7月豪雨災害(西日本豪雨災害)
5.7 土砂災害防止対策(ハード対策)の例
5.8 火山災害
 5.8.1 火山災害の種類
 5.8.2 噴火警報と警報レベル
5.9 技術者の役割

第6章 雪害と減災
6.1 過去の大雪災害と最近の雪害の傾向
 6.1.1 年最大積雪深の変化
 6.1.2 過去の大雪災害
 6.1.3 最近の大雪災害とその特徴
 6.1.4 雪害の社会的変遷
6.2 降雪
6.3 積雪の性質と雪害
 6.3.1 積雪の種類と力学的性質
6.4 雪害とその対策
 6.4.1 屋根雪と家屋周辺の除雪による事故
 6.4.2 道路雪氷災害
 6.4.3 雪崩・崩落雪災害
 6.4.4 吹雪・吹き溜まり災害
 6.4.5 着・冠雪災害
6.5 防災対策(ハード対策)と減災対策(ソフト対策)
 6.5.1 雪氷災害に関する気象庁の警報、注意報
 6.5.2 雪氷対策のソフト対策
6.6 行政機関による災害対応の概要
 6.6.1 地方自治体の対応
 6.6.2 2014年2月の関東甲信大雪の行政機関の対応
6.7 技術者の役割

第7章 海岸災害
7.1 海岸災害の事例
 7.1.1 高波災害
 7.1.2 高潮災害
 7.1.3 津波災害
7.2 高波災害
 7.2.1 高波災害の特徴
 7.2.2 高波の発生メカニズム
 7.2.3 高波の評価法
 7.2.4 防災対策と減災対策
7.3 高潮災害
 7.3.1 高潮災害の特徴
 7.3.2 高潮の発生メカニズム
 7.3.3 高潮現象の評価法
 7.3.4 防災対策と減災対策
7.4 津波災害
 7.4.1 津波災害の特徴
 7.4.2 津波の発生メカニズム
 7.4.3 津波現象の評価法
 7.4.4 防災対策(ハード対策)
 7.4.5 減災対策(ソフト対策)
7.5 海岸法と海岸防災
 7.5.1 海岸法の制定・改定と対策
 7.5.2 津波・高潮ハザードマップ
 7.5.3 技術者の役割

第8章 宅地防災
8.1 はじめに
8.2 宅地防災に関する法的基準
 8.2.1 都市計画法による開発申請と宅地の造成
 8.2.2 宅地造成等規制法
 8.2.3 宅地防災マニュアル
 8.2.4 建築基準法
 8.2.5 被災地危険度判定制度
8.3 宅地耐震設計
 8.3.1 宅地耐震設計の考え方
 8.3.2 耐震設計の一般的手順
 8.3.3 設計地震動
8.4 宅地擁壁
 8.4.1 擁壁の被害状況と既往地震被害の比較
 8.4.2 擁壁の安定計算
 8.4.3 擁壁などの簡易な点検
 8.4.4 擁壁の補修・補強対策
8.5 液状化
 8.5.1 液状化の被害状況
 8.5.2 液状化に対する安全率
 8.5.3 液状化に伴い被害を受けた建築物の復旧
 8.5.4 液状化の補強対策
 8.5.5 公共施設と宅地との一体的な液状化対策
8.6 大規模盛土
 8.6.1 大規模盛土の被害状況
 8.6.2 盛土の安定計算
 8.6.3 大規模盛土造成地
 8.6.4 大規模盛土造成地の対策工法
 8.6.5 個々の宅地で行う盛土滑動対策
8.7 注意すべき造成・開発
 8.7.1 盛土を起点とする土石流災害と法制度
 8.7.2 再生可能エネルギー推進における課題と法制度
 8.7.3 まとめ
8.8 技術者の役割

第9章 ソフト防災対策
9.1 はじめに
9.2 災害情報
 9.2.1 災害時の情報ニーズ
 9.2.2 集合的ストレスと集合行動
 9.2.3 関東大地震と流言
 9.2.4 東日本大震災と流言
 9.2.5 風評被害
 9.2.6 リスク情報とリスク認知
 9.2.7 災害におけるパニック神話
 9.2.8 通れた道路マップ
9.3 法制度
 9.3.1 災害対策基本法の概要
 9.3.2 災害救助法
 9.3.3 激甚災害制度
 9.3.4 治水三法(河川法、砂防法、森林法)
 9.3.5 住宅応急修理支援制度
 9.3.6 地区防災計画制度
9.4 ICTと防災
 9.4.1 災害時の情報の収集と伝達
 9.4.2 政府によるICT防災
 9.4.3 気象庁による危険度分布の公表
 9.4.4 都道府県の災害時情報共有システム(徳島県)
 9.4.5 市町村の災害情報システム

索 引
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