【刊行予定】核融合エネルギーの基礎

著者:岡﨑隆司
分野:理学
ページ数:224
判型:A5
ISBN:978-4-8446-0967-4
定価:本体 2,500円 + 税
地球温暖化の課題に対して、世界全体で2050年までに二酸化炭素の排出量を実質的にゼロにするカーボンニュートラルにする必要性がある。その対策として、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーや水素エネルギーと共に、核融合が各国で注目されている。我が国は2023年に地球温暖化対策として核融合を挙げて、核融合を新たなエネルギー産業と捉えて、産官学で推進しようとしている。
本書では、核融合の基本となるプラズマ物理の研究開発がどのように発展して来たかの流れを簡潔に交えつつ、プラズマ物理の基礎を説明している。また、エネルギー変換効率の観点から様々なエネルギー源と比較して核融合の特徴を説明し、核融合が温暖化対策に有効になるようにするには実用化時期の早期化が重要であることを述べている。
目次正誤表追加情報
はじめに

第1章 核融合エネルギーの基礎
 1.1 原子の構造と同位体
 1.2 物質の状態変化
 1.3 核融合反応とは
  1.3.1 核融合反応と核分裂反応
  1.3.2 質量欠損
  1.3.3 主な核融合反応
 1.4 核融合反応を起こすには
  1.4.1 核力
  1.4.2 熱運動
 1.5 プラズマの閉じ込め
  1.5.1 気体の閉じ込め
  1.5.2 プラズマの作り方
  1.5.3 プラズマの閉じ込め方式
 1.6 磁場閉じ込め方式
  1.6.1 直線系(開放端系)
  1.6.2 環状系(トーラス系)
  1.6.3 トカマク型閉じ込め
  1.6.4 ヘリカル型閉じ込め
 1.7 慣性閉じ込め方式
  1.7.1 慣性核融合の原理
  1.7.2 エネルギードライバー
  1.7.3 照射方法
  1.7.4 点火方法
  1.7.5 慣性核融合の各種方式

第2章 核融合プラントの基礎
 2.1 プラズマ断面形状
 2.2 核融合炉内のパワーフロー
 2.3 核融合プラントのパワーフロー
 2.4 プラント効率
 2.5 炉心プラズマ条件
  2.5.1 臨界条件と自己点火条件
  2.5.2 ローソン条件
  2.5.3 典型的なプラズマの閉じ込め方式

第3章 プラズマ特性
 3.1 プラズマ粒子の素過程
  3.1.1 励起、電離、緩和、再結合
  3.1.2 電磁波の放射
  3.1.3 荷電交換
 3.2 プラズマ粒子の挙動
  3.2.1 プラズマを捉える視点
  3.2.2 プラズマ挙動を把握する手段
 3.3 単一粒子の運動
  3.3.1 電場と磁場
  3.3.2 磁力線の特性
 3.4 電磁流体の巨視的運動
  3.4.1 反磁性
  3.4.2 デバイ遮蔽
  3.4.3 シース
  3.4.4 プラズマ振動
 3.5 平衡
  3.5.1 系の平衡と安定性
  3.5.2 プラズマの平衡
  3.5.3 プラズマの水平方向位置
  3.5.4 プラズマ断面形状
 3.6 安定性
  3.6.1 MHD 不安定性
  3.6.2 エネルギー原理
  3.6.3 プラズマ研究の始まりと安定化研究の進展
 3.7 MHD モード
  3.7.1 電子プラズマ波、イオン音波
  3.7.2 磁気音波、シアアルヴェン波
  3.7.3 キンク不安定性
  3.7.4 バルーニング不安定性
  3.7.5 テアリングモード不安定性
  3.7.6 ドリフト波不安定性
 3.8 エネルギー閉じ込め
  3.8.1 エネルギー閉じ込め時間
  3.8.2 衝突による拡散
  3.8.3 プラズマの閉じ込め研究
  3.8.4 異常輸送
  3.8.5 H モードの発見
  3.8.6 H モードの圧力分布
  3.8.7 閉じ込め改善と高温化研究
  3.8.8 プラズマ乱流
  3.8.9 閉じ込め時間の比例則
  3.8.10 核融合炉開発研究の変化
  3.8.11 アルファ粒子加熱
  3.8.12 高エネルギー粒子の閉じ込め
 3.9 ディスラプション
 3.10 燃焼率
 3.11 プラズマ加熱/ 電流駆動
 3.12 中性粒子ビーム入射
  3.12.1 NBI における素過程
  3.12.2 NBI によるプラズマ加熱
  3.12.3 NBI による電流駆動
 3.13 高周波入射
  3.13.1 群速度と位相速度
  3.13.2 共鳴と遮断
  3.13.3 ランダウ減衰
  3.13.4 サイクロトロン減衰
  3.13.5 プラズマ中に存在する波の周波数
  3.13.6 高周波によるプラズマ加熱
  3.13.7 高周波による電流駆動
 3.14 自発電流

第4章 核融合プラントを構成する機器
 4.1 ブランケット
  4.1.1 トリチウム生成
  4.1.2 熱の取り出し
  4.1.3 ブランケット構成
 4.2 ダイバータ
  4.2.1 プラズマ対向壁
  4.2.2 ダイバータ構成
  4.2.3 熱エネルギーの流れ
  4.2.4 ダイバータ形状
  4.2.5 ダイバータ板への熱流束低減法
  4.2.6 リミッタとポンプリミッタ
  4.2.7 第一壁
 4.3 超伝導コイル
  4.3.1 コイルの種類
  4.3.2 トロイダル磁場コイル
  4.3.3 電磁力
  4.3.4 ポロイダル磁場コイルによるプラズマ断面形状制御
  4.3.5 ポロイダル磁場コイルの磁場発生方式
  4.3.6 変流器の原理
  4.3.7 中心ソレノイドコイル
  4.3.8 超伝導コイルの必要性
  4.3.9 超伝導とは
  4.3.10 反磁性体
  4.3.11 完全反磁性
  4.3.12 強磁性体のヒステリシス損失
  4.3.13 第二種超伝導体
  4.3.14 超伝導体のヒステリシス損失
  4.3.15 クエンチ
  4.3.16 超伝導コイルの作り方
  4.3.17 核融合炉の超伝導コイル
 4.4 プラズマ加熱/ 電流駆動装置
  4.4.1 電磁誘導駆動法
  4.4.2 中性粒子ビーム入射装置
  4.4.3 高周波入射装置
 4.5 燃料循環系
 4.6 クライオスタットと炉構成
 4.7 遮蔽体
  4.7.1 放射線
  4.7.2 遮蔽の考え方
  4.7.3 遮蔽体の設置場所
 4.8 遠隔保守
 4.9 核融合発電
  4.9.1 発電方式
  4.9.2 核融合発電の特徴
 4.10 電源系
  4.10.1 核融合炉電源系の特徴
  4.10.2 コイル電源系の設備容量低減に寄与した研究
 4.11 運転シナリオ
  4.11.1 パルス運転シナリオ
  4.11.2 定常運転シナリオ
 4.12 計測システム
 4.13 核融合プラントの全体構成
 4.14 核融合燃料の資源量
 4.15 安全性
  4.15.1 実効線量
  4.15.2 ラジカル
  4.15.3 放射線が人体に影響する仕組み
  4.15.4 発がんリスク
  4.15.5 自然放射線
  4.15.6 預託実効線量
  4.15.7 線量限度
  4.15.8 核融合炉の潜在的放射線リスク指数
  4.15.9 核融合炉の固有の安全性
  4.15.10 安全確保の基本的な考え方
 4.16 核融合炉の段階的開発
  4.16.1 核融合炉の開発段階は実験炉
  4.16.2 ブローダーアプローチ計画
  4.16.3 トカマク型の核融合開発状況
  4.16.4 トカマク型以外の核融合開発状況

第5章 核融合発電と現行発電システムの比較
 5.1 エネルギーの特性
  5.1.1 エネルギーの種類
  5.1.2 エネルギー資源の分類
 5.2 水素は二次エネルギー
  5.2.1 水素製造法
  5.2.2 電気分解の変換効率
  5.2.3 水素燃焼発電と水素燃料電池の変換効率
  5.2.4  水素燃焼発電と水素燃料電池で用いる水素は二次エネルギー
 5.3 核融合発電で用いる水素は一次エネルギー
 5.4 発生するエネルギー量の違い
  5.4.1 LNG 火力と水素燃焼発電の違い
  5.4.2 炭素燃焼の化学反応と核分裂反応の違い
  5.4.3 核分裂反応と核融合反応の違い
  5.4.4 水素燃焼の化学反応と核融合反応の違い
 5.5 発電系の違い
  5.5.1 MHD 発電
  5.5.2 カルノーサイクル
  5.5.3 ブレイトンサイクル
  5.5.4 ランキンサイクル
  5.5.5 核融合発電
 5.6 燃料サイクルの違い
 5.7 高速増殖炉と核融合炉の増倍時間の違い
 5.8 軽水炉と核融合炉の安全上の違い
  5.8.1 核分裂反応と核融合反応で出てくる放射性核種の違い
  5.8.2 物理的半減期の違い
  5.8.3 内部被曝線量の違い
  5.8.4 濃度限度の違い
  5.8.5 崩壊熱密度の違い
  5.8.6 放射性廃棄物の違い
  5.8.7 炉運転停止法の違い
 5.9 発電コストと電源構成
  5.9.1 発電コスト
  5.9.2 電源構成
  5.9.3 LNG 火力と水素燃焼発電の発電コスト
  5.9.4 核融合発電の発電コスト
 5.10 発電システムの負荷追従性
 5.11 平和利用の核融合エネルギー

第6章 持続可能な社会に向けた発電システム
 6.1 発電システムが満たすべき条件
 6.2 地球温暖化対策に必要な核融合発電
  6.2.1 地球温暖化が進んだ地球環境
  6.2.2 核融合は脱炭素化に有効な発電システム
  6.2.3 核融合関連のスタートアップ企業
  6.2.4 地球温暖化対策の主力となる発電システム
  6.2.5 核融合開発の更なる加速の必要性

参考文献
INDEX
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